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賞状の部分筆耕とは?受者名や日付だけを書く筆耕の仕事内容と難しさ

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賞状の筆耕と聞くと、賞状用紙に表題から主文、受者名、日付、贈者名まで、すべて毛筆で書く仕事を思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし、実際の筆耕には、すでに大部分が印刷されている賞状や証書に、受者名や日付、証書番号など、一部だけを手書きで書き入れる「部分筆耕」という仕事もあります。

書くのが名前や日付だけなら、賞状を最初から最後まで書くより簡単そうに見えますよね。

ところが、部分筆耕で求められるのは、書き入れる文字を単体できれいに書くことだけではありません。すでに印刷されている文字の太さや雰囲気、賞状全体のバランスに合わせて、手書きした部分を違和感なくなじませる必要があります。

私も現在、筆耕会社で全文筆耕と部分筆耕の両方に携わっていますが、実際に書いてみると、部分筆耕には全文筆耕とは異なる難しさがあると感じています。

この記事では、

  • 賞状の部分筆耕がどのような仕事なのか
  • 全文筆耕と部分筆耕の違い
  • 少ない文字を賞状全体になじませる難しさについて

など、実際の経験を交えながら解説します。

記事を読むことで、部分筆耕の仕事内容を具体的にイメージできるだけでなく、仕事として取り組むためにどのような力が必要なのか、自分には何を学び、どこを伸ばす必要があるのかも見えてくるはずです。

書道経験を生かして筆耕の仕事をしてみたい方や、賞状筆耕の実際を知りたい方に、部分筆耕という仕事を知るきっかけとして読んでいただけたら嬉しいです。

なお、この記事は、私がnoteに投稿した以下の記事をもとに、ブログ向けに再構成しています。

この記事を書いた人

1級賞状技法士・筆耕士 かおりんご

賞状技法士1級認定証書
目次

賞状の部分筆耕とは、一部だけを手書きする仕事

書:かおりんご(Instagramに動画あり)

部分筆耕とは、すでに文章や枠などが印刷されている賞状・証書に、必要な部分だけを手書きで書き入れる仕事です。

賞状や証書のすべてを手書きするのではなく、受け取る方によって内容が変わるところを中心に筆耕します。

部分筆耕で書き入れる主な内容

部分筆耕で書くことが多いのは、例えば以下のような項目です。

  • 受者名
  • 日付
  • 証書番号
  • 賞名
  • 段位や級位
  • 所属名
  • 一部の肩書き
  • 贈者名

案件によって書き入れる内容は異なります。

受者名だけを書くものもあれば、受者名と日付、証書番号を書く場合もあります。

同じ形式の賞状を複数人に渡す場合、表題や主文、贈者名など、全員に共通する部分はあらかじめ印刷しておき、受け取る方によって変わる部分だけを手書きするという形です。

すべてが印刷された賞状よりも、受者名など大切な部分に手書き文字が入ることで、特別感のある一枚になります。

部分筆耕が使われる賞状や証書

部分筆耕が使われる場面として、次のようなものがあります。

  • 小学校・中学校・高校・大学などの卒業証書
  • 企業が社員へ贈る永年勤続表彰状
  • 剣道・柔道・空手などの昇段・昇級証書
  • 講座や研修を修了した方へ贈る修了証書
  • 民間資格や技術の取得者へ贈る認定証
  • スポーツ大会や文化活動の受賞者へ贈る表彰状
  • PTAや自治会、地域活動などに貢献した方へ贈る感謝状

たとえば卒業証書の場合、学校名や証書の文章、校長名などは印刷されていて、卒業生一人ひとりの氏名や生年月日、証書番号などをあとから書き入れます。

企業の永年勤続表彰でも、表彰文は共通している一方、受者名や勤続年数、日付などは人によって異なります。

そのため、変わる部分だけを筆耕士が手書きするのです。

「そういうところって手書きだったの?」

と、意外に思う方もいるかもしれません。

しかし、筆耕の現場では、このような部分筆耕の仕事は珍しくありません。

むしろ、賞状関連の仕事の中では、多く扱われる筆耕の一つです。

全文筆耕と部分筆耕の違い

賞状の「全文筆耕」と「部分筆耕」の違いを簡単にまとめると、次のようになります。

比較項目全文筆耕部分筆耕
手書きする範囲表題、受者名、主文、日付、贈者名など、賞状全体受者名、日付、証書番号など一部
レイアウト筆耕士が全体を一から考える既存の印刷や余白に合わせる
書く文字数多い比較的少ない
主な難しさ賞状全体の構成とレイアウト既存の文字になじませること
求められる力レイアウト力、筆力、集中力観察力、調整力、対応力

全文筆耕では、原稿を確認したうえで、文字の大きさ、改行位置、行間、余白などを考え、賞状全体のレイアウトを一から作ります。

部分筆耕では、すでに印刷されている文字や、あらかじめ設けられた余白に合わせて書き入れます。

そのため、全文筆耕のように、まっさらな状態から紙面全体を設計する必要は基本的にありません。

ただし、レイアウトを一から作らないからといって、部分筆耕の方が必ず簡単というわけではないのです。

全文筆耕については、以下の記事で開設しています。

部分筆耕が「簡単そう」に見える3つの理由

部分筆耕は、筆耕をしたことがない方だけでなく、書道経験のある方から見ても、比較的取り組みやすそうに感じる仕事だと思います。

その理由は、大きく分けて3つあります。

  • 書く文字数が少ないから
  • 賞状全体のレイアウトを一から作らないから
  • 書道経験があれば書けそうに感じるから

書く文字数が少ないから

一つ目は、書く文字数が少ないことです。

受者名だけ。
日付だけ。
証書番号だけ。

主文を何十文字も書く全文筆耕と比べれば、筆を動かす時間そのものは短くなります。

書く文字数だけを見れば、

「これならすぐに書けそう」
「名前だけなら失敗も少なそう」

と思うのも自然なことです。

賞状全体のレイアウトを一から作らないから

全文筆耕では、賞状用紙の大きさと原稿をもとに、賞状全体のレイアウトを考えます。

表題をどこに配置するのか。
主文をどこで改行するのか。
受者名や贈者名をどのくらいの大きさで書くのか。
文字間や行間をどの程度空けるのか。

こうしたことを一つずつ考えなければなりません。

一方、部分筆耕では、すでに印刷されている賞状に書き入れるため、紙面全体の構成はほぼ決まっています。

かおりんご

レイアウトを最初から作らない分、取りかかりやすそうに見えるよね。

書道経験があれば書けそうに感じるから

部分筆耕は、氏名や日付など、比較的短い言葉を書く仕事です。

そのため、書道経験が長く、字に自信のある方であれば、

「自分にもできるのでは?」

と感じやすいと思います。

たしかに、書道で身につけた筆づかいや線の力は、筆耕でも大きな強みになります。

しかし、部分筆耕で求められるのは、自分の字を単体で美しく見せることだけではありません。

部分筆耕の難しさは、書き入れる文字そのものではなく、その文字を賞状全体の中に自然に収めることにあります。

部分筆耕が意外と難しい5つの理由

書く文字数は少ない。

賞状全体のレイアウトも、ほぼできている。

それでも部分筆耕が難しいのは、すでに完成している賞状の中へ、あとから文字を加える仕事だからです。

私が考える、部分筆耕の難しい理由は以下の5つです。

  • 既存の文字に書き入れた文字をなじませる必要がある
  • 文字の太さや大きさを自由に決められない
  • 自分の字を前に出しすぎないことが大切
  • 書き直せる回数が限られている
  • 書く場所や大きさを自分で判断する場面がある

既存の文字に書き入れた文字をなじませる必要がある

部分筆耕で最も難しいと感じるのが、すでに印刷されている文字と、あとから手書きする文字をなじませることです。

たとえば、賞状に印刷されている文字が、太くどっしりとした雰囲気だったとします。

その中に書き入れた受者名だけが、細くおとなしい文字だったらどうでしょうか。

受者名だけが弱く見えて、賞状全体のバランスが崩れてしまいます。

反対に、印刷されている文字が、すっきりと上品な雰囲気なのに、あとから書いた文字だけが太く力強すぎても、そこだけが目立ってしまうでしょう。

文字単体では、きれいに書けている。
誤字もない。
形も整っている。

それでも、賞状全体で見たときに、その部分だけが浮いて見えることがあります。

部分筆耕で確認したいポイント
  • 既存の文字と太さが合っているか
  • 文字の大きさが周囲と合っているか
  • 力強さや上品さなど、字の雰囲気が合っているか
  • 書き入れた文字だけが目立っていないか
  • 賞状全体で見たときに違和感がないか

部分筆耕では、書き入れる一文字だけを見るのではなく、常に賞状全体を見ながら書く必要があります。

文字の太さや大きさを自由に決められない

通常の作品制作であれば、自分の得意な大きさや太さで文字を書くこともできます。

しかし、部分筆耕ではそうはいきません。

すでにある文字と余白に合わせて、筆の大きさや墨量、文字の大きさを調整します。

余白が狭ければ、小さく収めなければなりません。

受者名を堂々と見せる必要がある場合は、周囲の印刷文字に負けない大きさと線の強さが求められます。

また、同じA3サイズの賞状でも、受者名を書くために用意された余白は案件ごとに異なります。

そのため、

「受者名はいつもこの大きさで書く」
「この筆を使えばどの賞状にも対応できる」

というわけにはいきません。

目の前の賞状を見ながら、その都度調整します。

自分の字を前に出しすぎないことが大切

芸術としての書道では、自分らしい表現や書風が魅力になります。

勢いのある線。
大胆な余白。
個性的な文字の形。

見る人の心を動かすために、自分の表現を前に出すこともあるでしょう。

一方、筆耕では、依頼された用途や紙面に合う文字を書くことが大切です。

筆耕で求められるのは、「自分らしい字を見せること」よりも、「その場に合う字を書くこと」です。

部分筆耕は、この違いが特に表れやすい仕事だと思います。

自分がいつも書いている字を、そのまま書けばよいわけではありません。

既存の文字がどっしりしているなら、そこに負けない字を書く。
すっきりした賞状なら、手書き文字だけが強く出すぎないようにする。

自分の字を賞状へ押し込むのではなく、自分の字を目の前の賞状に寄せていく必要があります。

書道と実用書道の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

書き直せる回数が限られている

部分筆耕では、支給された賞状や証書へ直接書きます。

予備用紙が十分にあるとは限りません。

卒業証書や企業の証書など、指定された用紙自体に限りがあることもあります。

そのため、本番では受者名の漢字、旧字体、異体字、日付、証書番号などを慎重に確認しなければなりません。

名前は、とくに間違えられない部分です。

よく知っている漢字に見えても、細部が異なることがあります。

書き始める前に、原稿と賞状を何度も確認します。

また、文字の間違いだけでなく、

  • 墨汚れ
  • 墨のにじみ
  • 筆から落ちた墨
  • 手や袖によるこすれ
  • 用紙の折れや傷

にも注意が必要です。

かおりんご

書く文字数が少なくても、本番用紙に筆を入れる緊張感は変わらないよ。

書く場所や大きさを自分で判断する場面がある

部分筆耕では、書き入れる位置がはっきり指定されているものもあります。

一方で、余白だけが空いていて、

「この中へ自然に書いてください」

という形の賞状もあります。

この場合、筆耕士が賞状全体を見ながら、文字の開始位置や大きさを判断します。

一部だけを書く仕事ではありますが、その一部をどこに入れるか考えるためには、賞状全体を見る力が必要です。

受者名が一行で収まる場合と、肩書きや団体名を含めて複数行になる場合でも、配置は変わります。

賞状の中心線、既存文字の位置、上下の余白、左右の空き具合を見ながら、最も自然に見える場所を探していきます。

筆耕会社の現場では「案件と字の相性」も考えられる

私は現在、複数の筆耕士が所属する筆耕会社で仕事をしています。

そこで部分筆耕に携わるようになり、改めて感じたのが、同じ「字が上手い」でも、筆耕士によって得意な字や案件が異なるということです。

筆耕士によって得意な字の雰囲気は違う

筆耕会社には、さまざまな字を書く筆耕士がいます。

  • どっしりとした、威厳のある字を得意とする方
  • すっきりと洗練された字を書く方
  • 宛名書きや目録、お手紙など、細かい字を美しく整えて書く方
  • 柔らかく上品な字を書く方

皆さん字がお上手であっても、持ち味は同じではありません。

使用する筆や筆圧、線の太さ、文字の重心などによって、書き上がる文字の印象は変わります。

賞状にもそれぞれ雰囲気があるため、筆耕会社では、

「この賞状には、この人の字が合いそう」
「この印刷文字には、この筆耕士の字がなじみそう」

という視点で担当が決まることがあります。

もちろん、経験の有無や納期、作業量など、ほかの条件も関係します。

それでも、案件と筆耕士の字の相性が考慮されることは、部分筆耕ならではの特徴の一つだと感じています。

私には大きく威厳のある賞状が回ってくることが多い

私自身は、どちらかというと、どっしりとした大きめの字を書くことが得意です。

そのためなのか、私に回ってくる部分筆耕の案件は、A3以上の大きな賞状で、既存部分も太めの威厳ある雰囲気のものが多い傾向にあります。

かおりんご

自分の得意な字と案件の雰囲気が合っていると、やっぱり書きやすいんだよね。

もちろん、いつも同じような案件だけを担当するわけではありません。

すっきりした文字へ寄せる必要がある賞状もありますし、細かい文字を書く場合もあります。

それでも、多くの筆耕士がいる会社だからこそ、各自の得意分野を生かした振り分けができるのだと思います。

個人で受ける場合は、自分から案件へ寄せる力が必要

筆耕会社では、その賞状に合いそうな字を書く筆耕士へ案件を振ることができます。

しかし、個人で仕事を受ける場合や、少人数で筆耕をしている場合は、そうはいきません。

基本的には、依頼された賞状に合わせて、自分の字を調整する必要があります。

既存の文字が太く力強ければ、それに負けないように書く。
上品で繊細な印象なら、筆圧や線の太さを抑える。
余白が少なければ、文字を小さくしても弱く見えないように工夫する。

個人で部分筆耕を受けるなら、自分の得意な字だけでなく、案件に合わせて字を変化させる調整力がより求められます。

学んだ賞状のルールだけでは対応できないこともある

賞状技法には、文字の大きさや配置について、基本となる考え方があります。

私自身も、日本賞状技法士協会で長年学び、表題、受者名、主文、日付、贈者名などの配置を身につけてきました。

賞状を書くうえで、基本を知っておくことはとても大切です。

しかし、実際の筆耕の仕事では、自分が学んできた形にぴったり当てはまる賞状ばかりではありません。

表題がない賞状や独自レイアウトの証書もある

実際の仕事では、次のような賞状や証書に出会うことがあります。

基本の形とは異なる賞状の例
  • 「賞状」「感謝状」「表彰状」といった表題がない
  • 既存文字の開始位置が一般的な賞状と大きく異なる
  • 上下左右の余白が独特
  • 基本とされる文字の大きさ順になっていない
  • 肩書きや団体名が長く、用意された余白へ収めにくい

私が学んだ賞状技法では、一般的に、表題、受者名、贈者名、主文、日付などの役割に応じて文字の大きさを変えます。

ところが、すでに印刷された賞状の中には、その基本とは異なる大きさで文字が配置されているものもあります。

そのような場合、自分が学んできたルールだけを当てはめようとすると、かえって全体から浮いてしまうことがあります。

基本を守ることと目の前の賞状へ合わせることは別

学んだルールと異なる賞状を目の前にすると、

「この位置から書き始めてよいのだろうか」
「受者名はどのくらいの大きさにすると自然だろう」
「基本通りに書くと、むしろ違和感が出ないだろうか」

と悩むことがあります。

これは、基本を知っているからこそ生まれる悩みです。

ただし、基本を知らなくてもよいという意味ではありません。

基本は、すべての賞状へ同じ形を当てはめるためのものではなく、迷ったときに判断するための土台です。

基本を知っているからこそ、

  • どこが一般的な形と違うのか
  • 何を基準に位置を決めればよいのか
  • どの程度なら調整しても不自然にならないのか

を考えられます。

そのうえで、目の前にある賞状にとって、どの配置が最も自然なのかを判断します。

判断に迷うときは確認することも大切

私自身、部分筆耕の位置や文字の大きさに迷うことがあります。

その場合は、一人で判断しきろうとせず、現場の先輩や社員の方に確認します。

過去に似た賞状がなかったか探し、以前の書き方を参考にする場合もあります。

筆耕の仕事では、

「きっと、この位置で大丈夫だろう」

と、根拠のないまま進めることの方が危険です。

とくに、書き直しが難しい用紙では、迷った段階で確認した方が安心できます。

かおりんご

わからないまま書き始めるより、事前に確認することも筆耕の大切な仕事だよ。

部分筆耕で求められる4つの力

部分筆耕では、字を美しく書く力以外にも、いくつかの力が求められます。

  • 賞状全体を見る観察力
  • 字を周囲へ合わせる調整力
  • 実用書道や賞状技法の基礎知識
  • 間違いを防ぐ確認力

賞状全体を見る観察力

まず必要なのが、賞状全体を見る観察力です。

受者名を書く場合でも、受者名の余白だけを見ていてはいけません。

既存の文字の太さ。
文字の大きさ。
縦長なのか、横に広い文字なのか。
賞状全体の中心。
上下左右の余白。
堂々とした印象なのか、上品で控えめな印象なのか。

こうした要素を確認したうえで、書き入れる文字を考えます。

部分筆耕は、一部分を書く仕事ですが、一部分だけを見ていてはできない仕事です。

字を周囲へ合わせる調整力

観察した内容を、自分の文字へ反映する調整力も必要です。

いつもと同じ筆。
いつもと同じ文字の大きさ。
いつもと同じ筆圧。

これだけでは、さまざまな賞状に対応できません。

必要に応じて筆を変え、墨量を調整し、文字の大きさや線の太さを変えます。

場合によっては、自分が普段書く文字よりも、少し力強くしたり、反対に控えめにしたりします。

自分の書風を完全になくすことは難しいですが、賞状の中で違和感が出ない範囲へ近づけていくことが大切です。

実用書道や賞状技法の基礎知識

部分筆耕では、賞状全体のレイアウトを一から作らない場合が多いです。

それでも、賞状技法の知識が不要なわけではありません。

受者名をどの程度大きく見せるのか。
複数行になるとき、どのように配置するのか。
肩書きと氏名の大きさをどう変えるのか。
賞状の中心に対して、どこへ配置するのか。

これらを判断するには、賞状技法の基本が役立ちます。

筆耕士を目指して賞状技法を学びたい方は、以下の記事も参考にしてください。

間違いを防ぐ確認力

部分筆耕では、受者名や日付、証書番号など、間違えてはいけない情報を書き入れます。

なかでも受者名は、同じ読み方でも使われている漢字が異なることがあります。

普段よく目にする漢字だからといって、思い込みで書き始めないことが大切です。

書く前には、主に次のような点を確認します。

  • 氏名の漢字や文字数に間違いがないか
  • 旧字体や異体字、似た形の漢字が含まれていないか
  • 肩書きや所属名など、どこまで書き入れるのか
  • 日付や証書番号、段位などの内容が正しいか
  • 指定された書き方や文字の並びに見落としがないか

たとえば、「高」と「髙」、「崎」と「﨑」のように、よく似ていても異なる文字があります。

原稿をざっと見ただけでは、普段見慣れている漢字だと思い込んでしまうこともあるため、細部まで注意して確認しなければなりません。

また、複数枚を続けて書く場合でも、まとめて確認するのではなく、書き始める前に一枚ずつ氏名や番号を確かめます。

書き終えたあとにも原稿と見比べ、文字の間違いや抜けがないかを確認します。

部分筆耕では、きれいな文字を書くことと同じくらい、指定された内容を正しく書くことが重要です。

どれだけ美しく書けていても、氏名や日付を間違えてしまえば、そのまま納品することはできません。

書く前と書いたあとに丁寧に確認することも、筆耕の仕事に欠かせない力の一つです。

部分筆耕に慣れるには、たくさん見て、たくさん書く

部分筆耕で必要な観察力や調整力は、知識を読んだだけですぐに身につくものではありません。

基本を学んだうえで、実際にさまざまな賞状を見て、書いていく必要があります。

さまざまな賞状や証書を見る

まずは、いろいろな賞状を見ることが大切です。

賞状といっても、その形は一つではありません。

  • 表題があるもの、ないもの
  • 縦書き、横書き
  • 太く威厳のある文字
  • 細く上品な文字
  • 受者名の余白が広いもの
  • 肩書きや団体名を含めると、かなり狭くなるもの。

多くの賞状を見ることで、

「この雰囲気なら、このくらいの太さが合いそう」
「この余白なら、あまり大きくしない方が自然だろう」

といった判断の引き出しが増えていきます。

実際の大きさで書く練習をする

賞状の画像を見て学ぶだけでなく、実際の大きさで書く練習も必要です。

A4とA3では、同じ文字を書いても見え方が変わります。

画面上ではちょうどよく見えた文字も、実物の賞状へ書くと小さく感じることがあります。

反対に、大きく書きすぎて余白が足りなくなる場合もあるでしょう。

練習用紙やコピーした賞状見本などを使い、

  • 受者名を書く
  • 日付を書く
  • 証書番号を書く
  • 肩書きと氏名を組み合わせる

といった練習を重ねます。

書いた文字を賞状全体で見直す

書き終えたら、書いた文字だけを見るのではなく、賞状全体を見直します。

「氏名は上手に書けた」

と思っても、賞状全体から見ると小さすぎるかもしれません。

反対に、名前を立派に見せようとして、大きく書きすぎている可能性もあります。

可能であれば、少し離れた位置から見たり、写真に撮ったりすると、全体を客観視しやすくなります

練習後に振り返りたいこと
  • 書き入れた部分だけが浮いていないか
  • 既存の文字と線の太さが合っているか
  • 大きすぎたり、小さすぎたりしないか
  • 中心や余白のバランスは自然か
  • もう一度書くなら、どこを変えるか

うまくいかなかったところを振り返り、次の練習で修正します。

この繰り返しが、部分筆耕の感覚を育ててくれます。

量をこなすことで少しずつ判断できるようになる

私も筆耕会社へ入ったばかりの頃は、既存の文字へ合わせることがうまくいかず、悩むことがありました。

書き入れた文字だけが弱く見える。
反対に、力強く書きすぎて目立ってしまう。
文字の大きさや位置が定まらない。

そのような経験を重ねてきました。

今でも迷うことはあります。

ただ、さまざまな賞状を見て、実際に部分筆耕を繰り返す中で、

「この印刷文字なら、少し太めに書いた方がよい」
「この余白では、受者名を大きくしすぎない方が自然」
「この賞状は、きっちり小さく収めるより、堂々と書いた方が合う」

と、以前より考えられるようになりました。

これは、実際に量をこなす中で少しずつ身についた感覚だと思います。

かおりんご

部分筆耕も、たくさん見て、たくさん書くことが上達への近道だよ。

筆耕士を目指すための学び方や準備については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

賞状の部分筆耕に関するよくある疑問

ここでは、部分筆耕に興味を持った方が気になりやすい疑問についてまとめます。

部分筆耕と全文筆耕はどちらが難しい?

全文筆耕と部分筆耕では、難しさの種類が異なります。

全文筆耕では、賞状全体のレイアウトを一から作り、すべての文字を手書きします。

そのため、レイアウト作成や長い主文の清書などに時間と集中力が必要です。

一方、部分筆耕は書く文字数が少ないものの、すでに印刷された文字へなじませる難しさがあります。

全文筆耕は「賞状全体を作る難しさ」、部分筆耕は「すでにある賞状へ合わせる難しさ」があります。

単純に、どちらの方が簡単とは言い切れません。

書道経験があれば部分筆耕はできる?

書道経験は、筆づかいや字形を身につけるうえで大きな強みになります。

ただし、書道経験があるだけで、すぐに部分筆耕の仕事ができるとは限りません。

部分筆耕では、小筆で氏名や日付を安定して書く力に加えて、既存の文字へ合わせる調整力が必要です。

また、賞状の配置や文字の大きさに関する基本知識も役立ちます。

芸術書道と実用書道では求められるものが異なるため、筆耕を仕事にしたい場合は、実用書道や賞状技法を学んでおくことをおすすめします。

部分筆耕に資格は必要?

筆耕士として仕事をするために、必須となる公的資格はありません。

ただし、資格が不要だからといって、技術や知識も不要ということではありません。

人名を正しく美しく書く力。
小筆を安定して扱う力。
賞状全体を見る力。
案件に合わせて調整する力。

こうした力を身につけておく必要があります。

資格取得を目指して体系的に学ぶことは、技術を身につける一つの方法です。

部分筆耕だけを練習すれば仕事になる?

部分筆耕の練習は、実際の仕事へつながる大切な訓練です。

ただし、部分筆耕だけを切り離して学ぶよりも、賞状全体の基本を理解したうえで練習した方が対応力は高まります。

なぜなら、部分筆耕でも、文字の大きさや配置を決めるときには、賞状全体の構成を理解している必要があるからです。

全文筆耕と部分筆耕の両方を学ぶことで、

「この受者名は、賞状全体の中でどのような役割を持つのか」

を考えながら書けるようになります。

まとめ|部分筆耕は少ない文字を賞状全体になじませる仕事

部分筆耕は、すでに印刷されている賞状や証書に、受者名、日付、証書番号など、一部だけを手書きする仕事です。

書き入れる文字数だけを見れば、全文筆耕よりも簡単そうに感じるかもしれません。

しかし、実際の部分筆耕では、少ない文字をただきれいに書けばよいわけではありません。

部分筆耕で大切なこと
  • すでにある文字やレイアウトへ違和感なくなじませる
  • 周囲の文字に合わせて太さや大きさを変える
  • 自分の書風を前に出しすぎない
  • 賞状全体を見て、自然な位置へ書き入れる
  • 学んだ基本を土台に、目の前の賞状へ合わせる
  • 原稿内容を正確に確認する

部分筆耕は、一部分だけを書く仕事です。

しかし、その一部分を自然に仕上げるためには、賞状全体を見る観察力と、案件へ合わせる調整力が求められます。

「一部だけだから簡単」なのではありません。

一部だけをあとから書き加えるからこそ、周囲との調和が大切なのです。

私自身、筆耕会社でさまざまな部分筆耕の案件に向き合う中で、少しずつ判断できることが増えてきました。

それでも、新しい形式の賞状に出会えば迷いますし、既存文字との合わせ方に悩むこともあります。

これからも、たくさんの賞状を見て、たくさん書きながら、その一枚に自然になじむ文字を書けるよう経験を重ねていきたいと思います。

かおりんご

Instagramでは部分筆耕関連の動画もアップしているので、興味があれば観にきてね!

全文筆耕の工程や、賞状1枚を書き上げる大変さについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

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